浅野直人税理士事務所│あさの会計

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医療法務

閉院時のカルテの保存について

豊中の税理士・医療経営士の浅野です。某市医師会の医療計画委員会の外部委員をさせて頂いています。
医療計画委員会では、開院・廃院される際、医師会=委員の先生方に質問が投げられた質問に対し、お答えすることが多いです。
最近は医業承継も行われることも多く、委員の先生方からも質問が多かったカルテ保存について見解を記載します。
突然開業している先生がなくなられることも多いので、参考にしていただければ幸いです。

カルテ

【原則】

法定保存期限:5年。

しかしながら、損害賠償請求権は10年ありますので、そこまでは保存する方がよいでしょう。

【カルテの管理責任】

医師法24条第2項。
「病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。」

→管理者が保存します。

【ケース別】

管理者死亡時

→管理者死亡時に管理責任は消滅し、厚労省通達(昭和47年8月1日医発第1113号厚生省医務局長通達)により、行政機関で保存することが適当とされています。実際には遺族と保健所との相談になるかと。

継承する場合

→厚労省ガイドラインQ&A「カルテは継承後の医療機関へ引き継ぐことが可能になっていることから、引き継いだ先の医療機関の管理者にカルテ管理の義務発生する。」とあり、管理責任も移行する。

継承せず閉院の場合(管理者は生存している)

→5年間の保管が義務。できれば損害賠償請求の10年を視野に入れて保存する。損害賠償に対しては、医師賠償責任保険の特約(閉院後にも賠償責任が生じた場合の補償の継続)は確認したいです。

【保存方法】

電子カルテ

→HDなどに保存できますが、取り出すときに必要なソフトが必要になるケースも。要確認です。

紙カルテ

→保管スペースを確保して保管。民間保管業者に委託するのも厚生労働省のガイドラインに沿った管理ができる業者を選定する必要があります。

【参考】
医事法規の疑義について
(昭和31・2・11 医発105)
【照会】
診療録は病院診療所の管理者が保存しなければならないが個人開業の場合管理者である医師が死亡した場合戸籍法による死亡届出義務者がその義務を継承するか、継承しない場合は別として継承する場合は同法第三十三条の適用を受けるか。
【回答】
戸籍法に規定する届出義務者は診療録保存義務を継承しない。

 

医師法第二十四条に規定する診療録等の取り扱いについて
(昭和47・8・1 医発1113)
【照会】
1 病院又は診療所が廃止された場合の診療録の保存義務者は、廃止された時点における管理者と考えられるが、管理者たる医師がいない場合は、如何なる処置をすべきであるか。
2 1に関連して、開設者が非医師か又は医療法第十二条の規定により管理委任が行われている場合における当該医療施設が、廃止された後の診療録の保存義務者は(イ)雇用されていた管理者(いわゆる勤務医)であったとして、退職後においても保存義務を負わすべきか。(ロ)当該管理者であった者が、すでに他に医療施設を開設し、又は勤務医として勤務している場合でも(イ)と同様か。(ハ)管理者を止めた時点で管理者でなくなっていると解されないか。
3 医療施設の開設者であり管理者である医師が死亡し、当該医療施設が廃止された場合、戸籍法による届出義務者は、診療録の保存義務は継承しないと解されているが、この場合の診療録の取扱いについて(イ)焼却等の方法により廃棄してよいか。(ロ)なんらかの形で保存すべきであるとすれば、その方法と理由
4 略
【回答】
1について病院又は診療所が廃止された場合の診療録の保存義務については、医師法上特段の定めはないが、通常は病院又は診療所の廃止時点における管理者において保存するのが適当である。なお、御照会の事例については、県又は市などの行政機関において保存するのが適当である。

2について 1によられたい。

3について
(イ)について 保存期間が既に五年間を経過している診療録であっても、事情の許すかぎり保存するのが適当である。
(ロ)について 患者の秘密が守られ、紛失が防止されるような方法により保存すべきである。

4について 略 

 

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